僕は村上春樹の小説が好きで、その中でもノルウェイの森はトップ3に入るほど好きな小説だ。この小説、人によってかなり好き嫌いが分かれるみたいだし、嫌いだという人の気持ちも良く分かる。何せ・・・・内容が病んでるし、暗いものね。
でも、香り立つ文体が際立っているし、暇で読む本が他にない時にはつい手に取って読み返してきたため、これまで50回ぐらいは読み返したと思う。読み返すたびにその重層的な中身と文体に感動を新たにしたりするのであった。
そのイメージソングとなっているノルウェイの森、良い曲ですよね?
僕はこの曲、ノルウェイの森に静かに降る雨を歌った曲であるとずっと思っていた。目を閉じれば、僕が上高地で写したこんな情景が浮かんでくるのだった。
ところが、だ、この「ノルウェイの森」という題名は全くの誤訳である、ということを皆さんはご存じだっただろうか?もしもノルウェイの森、という日本語訳ならば、NORWEGIAN WOODではなく、NORWEGIAN WOODSとなるはずだ。もっと言えば、Woods in Norwayか。
ということは、どういうことか?
ノルウェイの家具もしくは木材、というほどの意味らしい。
な・・なんだそれ?
しかも、本当は題名を「knowing she would(やらせてくれそうな女)」としたかったところ、大アイドルグループには相応しくない題名だと判断され、「NORWEGIAN WOOD」と韻を踏んだ題名に変更したとか、しないとか。
ノーウェジアン・ウッド(小鳥は逃げた)
あるとき 女の子と仲良くなった
彼女に引っかかったというべきか
彼女は僕を部屋に招き入れた
素敵な内装でしょ ノルウェーの木材よ
彼女は僕に泊まっていってと言い
好きなところに座ってと言った
僕は部屋を見回してみたが
椅子なんてなかった
僕は敷物の上に座り ワインを飲みながら
チャンスが訪れるのを待った
2時までおしゃべりをしたところで
彼女が言った もう寝ましょう
(ここで意味深な間奏が流れる・・・黒野追記)
朝から仕事なのよと彼女は言い
おかしそうに笑い出した
僕は暇なんだと言って
風呂場で寝るために すごすごと部屋を出た
目が覚めてみると 僕はひとりぼっち
小鳥は飛び去っていた
だから僕は火をつけた
素敵な燃えっぷりじゃないか ノルウェーの木材は
人里から隔絶された療養所の夜、ロウソクを囲んでレイコさんがギターを弾き、ワタナベと直子がそれに耳を傾けているシーンは幻想的だ。
「ひっそりとした月光の影と、ロウソクのひかりにふらふらと揺れる影とが、白い壁の上でかさなりあい、錯綜していた。僕と直子は並んでソファーに座り、レイコさんは向かいの揺り椅子に腰かけた。」
そして、この曲をリクエストする度に直子がレイコさんに100円を寄付するほど特別な曲として扱われたのが、このノルウェイの森だ。
「この曲を聴くと私ときどきすごく哀しくなることがあるの。どうしてだかはわからないけど、自分が深い森の中で迷っているような気になるの」
直子もレイコさんも、僕と同じように誤訳の題名から曲をイメージしていただけで、この曲の訳詞など思いもよらなかったのだろう。直子がこの訳詞を知っていれば、哀しくならなかっただろうし、病まなかったのかもしれない。が、それでは物語にならない。そして多分、この小説を書いた時の村上先生もご存じなかったはずだ。
とはいえ、「これは小説(=フィクション)なので」という先生の開き直りっぷりもお見事なのだが。
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